当院は設立当初から町中にある利点を生かして患者さんの「社会復帰」に力を入れてきましたが、昨今の社会の動向は患者さんの生活が地域にあることを前提として病院の役割を問いただしています。

「その人らしい生活を支える」をモットーとする、医療と生活、病院と地域という一つながりの看護において私が大切に思っていることは、「健全な関係性」です。関係性とは2つ以上の物事の間にある関わりやつながりの傾向のことを指します。
まずは患者さんとの関係性。対人関係療法の本の中の「治療関係というのは決して自然な人間関係ではない」という言葉にハッとした経験があります。患者さんの困りごとに影響する病気や症状を理解して治療に関わる責任と、患者さんが本来持つ力を信じて見出し、適切な質・量のサポートを行うこと。
精神科看護には、治療とサポートへの関与のバランス感覚が求められます。そして、多職種の関係性。同じ目標に向かって協働することが理想ですが、専門職は元々は他の集団の持つ世界観や文化と同調することが難しく、自然に任せておけば排除しあうと言われます。異なる価値観の中で「誰が」正しいかではなく、患者さんにとって「何が」正しいのか。連携を実のあるものにするために葛藤解決に向き合える関係性が必要です。

個人的な資質や経験を看護の「道具」として生かせることが精神科看護の一番の面白さだと感じており、管理職になってもその奥深さに興味は尽きません。患者さんへの関わりを通して自分を見つめ成長する探究の道を、看護部の皆とこれからも歩んでいきます。

看護部長　竹内和佳子